<Part 3 からの続き>
6.安全性
ボーイング787の注目ポイントとして見逃せないのが、その安全設計だ。
航空機の安全性は、設計、シミュレーション、実地試験、投入後のフィードバック、などによって左右される。
それを実施するのは、主に開発メーカーであるボーイング社の仕事だ。
その膨大な試験プロセスの、ごく一部を紹介する。
たとえば、エンジンの中にある回転翼(タービンブレード)が、理由はともかく破損したらどうなるか。 たとえそのような重大な事態でも、エンジン故障、あるいは停止、あるいは炎上、などなどの自体を招いてはならない。
たとえば、飛行中のエンジンに鳥が飛び込んだらどうなるか。
これによって不慮の事故が起きたとき、「申し訳ない、想定外でした。」という言い逃れはできない。
なので、その事態を想定した実験を行い、鳥が飛び込んでも故障しないエンジン設計とする。
次に、エンジンに、集中豪雨レベルを上回る大量の水、ひょう、砂・・・などを投入する実験。 これらもすべて、通常の運航において想定しうる量以上のレベルでテストする。
(動画の英語音声注)
・"Four and a half tons of water per minute" (毎分4.5トンの水を投入)
・"3/4tons of hail in 30 seconds" (30秒間に3/4トンの氷[ひょう]を投入)
・"Bird carcasses" (鳥の死骸)
航空機の安全の確保は、大きく分けて以下の4つのエリアがテーマとなる。
1.機体の設計段階
2.製造段階の品質確保
3.航空会社による、運航(オペレーション)上の安全確保
4.航空会社による、整備(メンテナンス)上の安全確保
1.の、設計段階での安全確保については、上記に説明した。
ここで、ボーイング787の部品・部材についてのストーリーを紹介したい。
約10年ぶりの新型旅客機となる787では、新素材の採用を徹底的に推し進めた結果、主翼も尾翼も、胴体も、新素材になった。
787の機体でどの程度 新素材が採用されたかを見てみよう。
下の図で、グレー、水色、紺色の部分は全てそういった複合材料が使われている。
絵で見ると、飛行機の外側を構成する部分、つまり構造部材に積極的に採用されていることがわかる。
では、素材別の構成比率をみてみよう。
グラフにしてみると、前出の機体の絵で見る採用状況ほどには新素材が圧倒的な印象を与えないのは、この円グラフが「重量比率」であることによる。 つまり、合金の半分の重さの新素材が、「全体の半分以上」で使われたということは、それ以上、すなわち半分をはるかに超えるレベルで採用が進んだことにほかならない。 開発に関わった技術者らが、仲間うちで787のことを「黒い飛行機」と形容することがあるのはそういうことだ。
これだけのレベルで新素材の採用が進んだのは、ボーイング社の設計やシミュレーション能力はむろんのことだが、それに協力する世界の製造メーカーの協力があってこそだった。
<Part 5に続く>