< Part 3 から続く >
次に、いまあげた4つのファクターよりももっと重要なファクターをあげる。
それは、「顧客が使う言語は何なのか?」という問題だ。
社内公用語の議論と検討において、この問いを忘れてはいけない。
英語に統一するのがベスト、と単純に結論付けるなら、全ての米系企業は世界中で・・・IBM本社内も、日本IBM社内も、日本HPでも、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパンの社内でも、当然英語で統一すべきだ、となる。
いま上にあげた外資企業の日本法人たちは、富士通や花王などの国内ライバルに顔負けの実績を日本であげているが、社内では英語も日本語も自在に飛び交っている。部署によっては圧倒的に日本語だし、英語を聞かない日だってある。
それは、英語以外の言語がメインであるその国をターゲット市場と定め、そこに市場機会を求めるのであれば、必要なことなのである。
つまり、顧客すなわち市場で使われている言語に精通し、彼らに最も効果的に「刺さる」その言語でもって収益を稼ぎ出すことは、あれこれ悩むまでもなく当然のことであり、悩んではいけないことである。
ついでに言えば、顧客だけでなく、そのコミュニティ(例えば、現地のことばでCSRやらないでどうする?)、取引先、外注先、協力会社、競合他社(潜在的な採用ソースでもあるわけだし)、メディア、などが主に使う言語を使いこなさないでどうする? ということだ。
ここまで書き記すと、結局のところこの問題も、エコシステム経営の基本にたどり着くことがわかる。全てのステークホルダーをつなぐ媒体として機能する、「信頼」にしても、「コミュニケーション」にしても、「契約」にしても、言葉を介して健全に成り立つからだ。
従って、多くの場合、最適解は、社内共通語はあった方が良いが、「現地語」も引き続き重要であり、日本で活動をして雇用をしている企業の場合は、現地語である日本語が重要であるので奨励し、かつそれに加えて世界的に重要である英語をも、公用語として奨励する、ということになるのではないか。
さて、楽天の取締役会の場合、ほとんどが日本人であるだけに、英語に統一する必要性が見えにくく、メリットよりもデメリットのほうが大きいように見えるため、これに反対する社員(表明するかどうかはともかく)や、うまくいかないと予想する内外の人々が多い。
社内公用語は、日本語がいいのか、英語がいいのか?
もちろん一概には言えないだろう。
では、楽天にとってはどちらが良い結果をもたらすか?
筆者の予想は、導入1年間は混乱やデメリットのほうが上回り、2年目からは、メリットが上回るのではないかとみるものである。
< 記事終わり >
特に「言わずもがな」「暗黙の了解」などを含むインフォーマルコミュニケーションラインに変革を起こすと予想されます。 何手先を読んだ上での施策でしょうし、いずれにせよエコシステム経営を怠る企業は衰退の一途をたどるでしょうから今後の企業推移を見れば本件の是非は十分事足りるのだと思います。
なによりこの記事で覚える最大の危機感は「楽天は日本を第一の市場として見ていない」という現実です。 もはや日本は魅力的な市場ではなくなりつつある、という現実。私にはこれをまざまざと見せつけられた気がしてなりませんでした。
逆に詩的な表現の場合、日本語のほうが英語よりも豊かで情緒に富む、と思うときがあります。
一方で、文章がわかりにくいとき、あるいは逆に感性豊かな表現ができないとき、それを特定の言語のせいにしたくない、という気持ちも覚えるのです。
というのは、英語で詩的な美しい表現をすることや、日本語で論理明晰な表現をすることは、努力によってできるはずと思うからです。(この2点についてはこんど当ブログに書きます。)
そうはいっても、確かに日本語を使うと、ついつい曖昧な表現になってしまうという特性がありますね。よく使われる、「ひとつよろしく・・」、「じゃそういうことで。」、「諸般の事情により」とかって、アメリカ人に説明しようとすると難しいですよね。いっそのこと「いやそれは意味のない表現なので忘れて。」と説明したらますます怪訝な顔をされますよね。
pipotさんの仰る通り、そういう習慣がなくなる効果も期待できるかもですね。
それはそれとして、
>相手に理解されやすい言語をコミニケーションツールとして使用すること・・
これも大切ですね。私が、顧客が使っていることばを使う、現地のことばを使う、と書いたのもその意味からです。
>楽天は日本を第一の市場として見ていない・・
その通りなんです。考えてみれば、日本は経済規模において世界の1割にも満たないことは事実なのですから、そこだけに安住しようというほうが不自然なわけです。まさに「お山の大将」であり「井の中の蛙」ですよね。楽天もそこに気づいた、ということです。一方で、グリーやDeNAやカカクコムやぐるなびは、気づいてないか、まだグローバル化の準備ができていないか、どちらかでしょう。
私は日本人が必ず世界をリードしていくと信じています。
会社において、経営や人間関係は日本語のままで、そしてグローバルにビジネスを展開していく時にツールとして第二言語(英語、西語や中国語)を巧みに操る…というのが出来ればベストですね。