マーケティングは「科学」のはずなのに、いちばん数字が乱暴に議論されても、誰も不審に思わない・・。
たとえば、経営者は市場シェアに目くじらをたてる。それ自体は大切なことだけれど、
「シェアが伸びました!」
という部下の報告。うれしいニュースなので、とりあえず喜ぶ。経営者も人の子、自分のリーダーシップのもと、良いニュースは悪いニュースよりも、自然と強く印象に残る。報告を聞きながら、どうやって現場をほめようか、とか、その調子でもっといけ、とさらにハッパをかけることを考えたりする。
でも要注意だ。
わかりやすい例をあげると、自社のプラズマTVの販売が2%伸び、市場シェアは前年38%から45%に伸びて、シェアトップに躍り出たとしよう。担当部長は得意そうに報告してくるはずだ。ボーナス増額ぐらい期待しているのかも知れない。大繁盛なので、部署を増員してほしいと言うかも知れない。
だがちょっと待ってほしい。
まず、販売台数の伸びが2%なのにシェアが7%も伸びたというのはどういうことか。
これは、シェアを計算するときの「分母」、つまり「市場」が小さくなったときに起こる現象なのだ。
同じ時期に、液晶TVは市場規模が倍近くも伸び、消費者のニーズはプラズマから液晶に移行してしまっているかも知れないのだ。
これは極端な例だが、「市場シェア」という、自社販売数を市場規模で単純に割るだけの数字ひとつとっても、事業の存亡に関わるバッドニュースを、グッドニュースのように報告することだってできてしまうのだ。数字のマジック、いや、マジックとも呼べない小手先のいたずらだ。
上記の例でいうと、市場シェアの議論をしなくても、「A社、プラズマTV販売が好調 〜 前年比102%を上回る」 とかいった報道記事を漫然を読んでいると、180度間違った判断をしかねない。