2010年08月22日

◆ 円高が、僕たちに教えるもの

過去2、30年ほどの円・ドルレートの折れ線グラフをみると、当時(1980年代半ば)の世界的なドル高に対して先進諸国が対応を合議・合意した「プラザ合意」以降、結局のところ、数年に一度のペースで、80円台から130円台の幅のなかで、レートが波打っているように見える。

そういった波動が存在しているとすると、ご存じのように80円台の現在は、その波動の高いところにいることになる。

円高は、日本経済を苦しめる、というのが通説だ。

それでなくても経済状況、雇用状況がよろしくない今日、円高が続くと、日本企業とくに製造業の国際競争力が弱められ、いいことない、というわけだ。

私たちは、企業の雇用削減などでその影響を感じる。

これをどう受け止めるか。

提案なのだが、円高を、何者かからの、僕たちへのメッセージと受け止めてみよう。



その昔、どんな企業に就職したら、私たちの親は一番安心したか。
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銀行、保険会社、大手製造メーカー、総合商社、などか。

この円高では、自動車を国内で作って輸出してもなかなか成り立たない。なので国内工場は減産ないしは閉鎖、代わって市場の近くに工場を移す。従って国内での製造工場の雇用な減る。

同様に、日本語しかできない日本人の給与が、英語と日本語を勉強した中国人よりも高いなら、ホワイトカラー労働力としての日本人の国際競争力は極端に不利となる。円高でこの傾向はさらに顕著になる。

逆にアジアで製造して日本で販売をするユニクロのようなビジネスモデルは、円高はその競争力を増す追い風となる。

このようにして円高という現象は、様々な業種やビジネスモデルの明暗を分けている。我々はその現実をよく観察しよう。

そして、そこから聞こえてくるメッセージに耳を傾けてみよう。

勉強も、就職も、自分を磨く努力も、日本国内で終わってはいけない、というメッセージが聞こえてくるはずだ。

posted by Nobby at 21:18 | Comment(1) | TrackBack(0) | 経営

2010年08月21日

◆ レアメタル危機への対策を


レアアース、レアメタルが、世界的に戦略資源の様相を帯びてきた。

それらがどんな物質で、どのような用途があるかは、この言葉で検索すればすぐにわかるので、ここでは次の数行の説明にとどめ、この問題の本質と、日本がとるべきアクションについて検討の目を向けたい。

レアアース、レアメタルを活用して、様々な高性能・高機能材料が開発されてきた。

ネオジム(Nd -よくネオジウムと誤記される)を利用して強力な磁石を作り、それを使って小型高性能モーターが開発され、ハードディスクや電気自動車に活用されるのは好例である。ほかによく知られる例では、電池を作るリチウム(Li)、電子部品に使われるガリウム(Ga)やゲルマニウム(Ge)、生体親和性の高さなどから医療にも用途が広いパラジウム(Pd)やチタン(Ti)、タンタル(Ta)、OA機器などに用途が広いタングステン(W)、などがあげられる。

使われるのは少量だが、世界の限られた地域で産出するので、少数の産出国によって販売量と価格をコントロールされやすい。その寡占の度合いは、ものによっては原油以上だとされる。

それに目を付けて、最近急激に輸出量の制限を始めたのが中国だ。

そして、その行動に単純に反発しているのが主に日本なのだが、反発しても、中国のペースにはまるだけだと思う。中国のレアアース輸出制限に対して日本などが反発してくるのは、始めから想定内であるはずだ。しかも中国の行動は、彼らの経済原理にかなっている。

かといって、それらの物質が手に入らないと製造できない重要な部品や製品があるのも事実だ。

ではどうすれば良いか。

それは次のような複合アクションだと思う。

・代替供給ルートの開拓 -- レアアース、レアメタルを産出する国・地域は、案外多い。しかも探せば続々と新しい埋蔵地域が発見される。オーストラリア、インド、モンゴル、カナダ、アフリカ諸国、南米諸国など、地理的にも地政学的にも散在している。まあ、散在しているというのは楽観的にすぎる表現になるが、ともかく、より多くの地域でとれるように努力することができるはずだ。これによって、一部の国の政治的思惑(悪くすれば軍事的思惑)で供給や相場が左右されない状況を作っていきたい。

・精製・製造技術の強化 -- 多くのレアアース、レアメタルは、産出量が限られている問題以上に、その分離や精製が難しいかコストがかかりすぎる問題を抱えている。この技術において、たとえば日本は一日の長がある場合が多い。日本はこのエリアの研究をさらに加速し、産出において優位が確保できなくとも、精製において優位が確保できれば、立派に戦える強みとなる。

・代替品の開発 -- ネオジムに代わる強力磁石の材料、リチウムに代わる高性能電池の材料、インジウムに代わる薄型テレビ用電極材料など、テーマと研究目的を明確にした代替素材の開発に注力することで、特定の元素が政治のカードに利用されることを回避していきたい。

・回収、リサイクルの推進とそれに関連する技術の強化 -- 家電製品や携帯電話のリサイクルが端緒についてきた。これをさらに推進し、商業的に有用な量の貴重資源がそこから回収できるような仕組みと、制度と、技術をさらに追求する必要がある。日本がレアアース、レアメタルの消費量が多いのは事実なので、回収量においてもリードしていく必要がある。また回収の技術についても、その効率追求、コストダウンの取り組みとともに、競合優位を確保していきたい。

これらのアクションによって、レアアース、レアメタルパニックは、きちんと回避することができると思えてならない。
posted by Nobby at 20:43 | Comment(0) | TrackBack(0) | 環境ビジネス