<5月5日の記事からの続き>
大企業が倒産して、割を食うのは、どう転んでも国民全体だ、という話をした。
ただ、そこで忘れられているファクターとして、社会全体の損失の前に、その会社の、債権者と、株主たちが直接的に大損をこうむるという点がある。
(経営者も失墜するのでダメージとなるが、これは救済のケースでも経営陣は通常全交代となるのでほとんど一緒だ。それに、このような事態になった責任の多くは経営者にあるのだから、路頭に迷ったところで自業自得と言っても良いと思う。それよりも従業員のことを思ってほしい。)
ちなみに、会社が立ちゆかず、払うべきものが全部払えない場合、会社は、払いたいところを勝手に優先させて払うことは許されていない。支払いを優先させる順にルールがある。
支払う順は次のような感じだ。
税金、給料、その他の支払い、担保のある借金、担保のない借金、優先株主、普通株主・・・
そして、この「支払い優先リスト」の逆順に、「取りっぱぐれる」ことになる。
つまり、リーマンのように単純に倒産すると、債権者の「貸したお金を返してもらえる権利」と、株主の「出資によって、会社の一部を所有していることによる資産価値と、その会社が生み出すはずだった利益の分け前をもらえる権利」が、紙切れになるという結果をもたらす。
どうりで、債権者(大企業の場合は、債権者は大抵が銀行だ)と、株主(金融機関だったり、事業会社だったり、創業者一族だったり、ファンドだったり、一般個人株主だったり)は、倒産を嫌い、救済を求めるわけだ。
でも、その事態を招いたのが放漫経営であった場合は、それを放置した株主は、株主責任をとる意味で、国民にツケを回す前に損失を受け止めるべきだと思う。経営者や取締役を選任・新任するのも株主だったのだから。
* * *
国の経済を左右するような「立派な」大企業が立ちゆかなくなったとき、そこから先どう転んでも、われわれ国民は損害を受ける。
これは逆に、「大企業が繁栄すると、経済が繁栄し、私たちはその恩恵を受ける」ということでもある。
この現象をもたらすことこそが、企業の、とくに大企業の、社会的任務である、ともいえる。
企業の発展の意義や価値は、その企業自身を繁栄させることだけにあるのではない。成長、発展することにより、企業活動(ものを買う、作る、売る、サービスを提供する、価値を生み出す、雇用を生み出す、など)を通じて、社会全体に貢献することになるのだ。
企業は、保身だけに走ってはいけない。
2010年05月06日
◆ つぶれては困る?(Part 2)
2010年05月05日
◆ つぶれては困る?(Part 1)
「Too Big to Fail」 (大企業すぎて、見殺しにはできない)
リーマンブラザーズも、そういった、つぶれては困る大企業の代表だった。
だがアメリカ政府は、リーマンが倒産することを、回避しなかった。
一方で日本は、それよりもずっと小さい企業であるJALを、公的なお金を使って、救済することを選んだ。
救済の場合は、国の財政、これはひいては、国民。
救済せずに、つぶれて、経済がダメージをこうむる場合は、国の経済が痛む。これも、割を食うのは、国民だ。
あれ? ・・・なんだ、結局どっちにしろ国民全体か。
であるなら、たとえば、ある超大企業を国のお金で救済すると1兆円かかる。一方、つぶれたことで国の経済が3兆円相当のダメージを受けるとすると、たとえ国民の血税を1兆円分使ったとしても、救済したほうが国としては(ひいては国民にとっては)トクになる、という判断が成り立つ。
救済すべきか否かの議論のうち、そろばん勘定の部分でいえば、JAL救済の正当化も、この論理があてはまることになる。また、リーマンについて、アメリカ政府は救済すべきだったのでは、という意見があるのは、この種類の論拠だ。
ただ、この論理には、ひとつ忘れられている重要なファクターがある。
それは、そういう大きな会社がつぶれた場合に、社会全体の損失の前に、直接的に大損をこうむる人たちがいるという点だ。
>> 5月6日の記事に続く
2010年05月04日
◆ 企業はどのようにつぶれるか?
多くの場合、経営がうまくいかなくなったとき、その症状は、最初に資金繰りに現れる。
そして、その結果、次のようなことが起きる。
・社員の給料を、決められた日に払うのが難しくなる。
・仕入れ先や業者への支払いが難しくなる。
・借金がある場合、その返済が滞る。
もちろん、その回避の方法として、経営努力以外に、どこかに会社や事業を売却したり、銀行や別の企業から資金的な支援を受けたり、場合によっては買収してもらって倒産を回避する、という場合もある。ところで、経営努力も、回避努力もむなしく、会社がつぶれてしまうことになったとき、いちばん困るのは、誰か?
また、その責任は誰にあり、どのような反省が求められるか?
この続きを次回の記事で、金融ショック以降、メディアを賑わせながら破たんしたリーマンとJALを例にあげて記してみたい。