<Part I からの続き>
さて、前回からの続きで、「富士フイルム株式会社」をとりまくチャレンジと、とりうる戦略について。
選択肢として並べたものをおさらいすると、こんな感じだ。
(1) 仕方がないのでフイルム事業は縮小して、リストラをする。
(2) 縮小する市場からは他社は撤退していくから、最後まで生き残って、しばらくの間稼ぐ。
(3) 医療向け、産業向けフイルムなどの特殊用途に資源を投入する。
(4) 「デジカメ」にとっての「フイルム」ともいえる「受光素子」の事業へ参入。
(5) デジカメになっても、人はプリントした写真は欲しいはず。それに関連するビジネスに資源を投入。
(6) デジカメ本体そのものに参入。
(7) 「写真」にこだわらず、フイルム関連技術を活かせるのなら、全く新しい業界でも参入する。たとえば、食品や、医薬品、化粧品など。

読者は、どれを選択しただろうか?
さて、実際にこの会社が、どの戦略をとったかというと、驚くことに、上記(1)〜(7)、すべて、なのだ。
長年の写真フイルム関連の研究開発によって培ったノウハウにはすごいものがある。
レンズを通ってきた光 -- といってもそれは、消費者やカメラマンがレンズを向ける、あらゆるものの姿であり、また時には患者の身体を通過してきたX線であるかも知れないし、時にははるか昔に発せられた銀河系外からの電磁波かも知れない -- それらの光を受け止めて反応する化学合成物を「感光剤」として、ロールやシートになった薄いプラスチック(フイルムベース)にそれを塗布して量産、その後「現像」という化学処理によって映像を浮かび上がらせる技術まで、フイルムの会社には、高度な化学反応をコントロールするノウハウに始まり、表面・界面関連技術、粉体・液体関連技術、メカトロ関連、光学関連、ナノテク、などを複合的に応用できるテクノロジーカンパニーなのだ。
これらの技術基盤をもってすれば、たとえば次世代TV用の「高機能材料」、ハイテク医療機器への応用、さらには、写真プリントの色褪せを防ぐ抗酸化技術はアンチエイジング技術となり、写真フィルムの原料であるゼラチンのノウハウはそのままコラーゲンを扱う技術となり、いわゆる機能性化粧品に参入したのは、意外どころかむしろ自然な選択といえる。
「富士写真フイルム」は、社名変更をして、「富士フイルム」となり、上記7つの戦略をすべて実行している。 >>富士フイルムの事業領域・・
posted by Nobby at 17:13
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イノベーション